俺の青春と恋の話(プロローグ)

天気の子観終わったし、自分の中でこの物語を最近になってやっと「恋」から「思い出」に変えることが出来て、自分の中で決着をつけることが出来たからそろそろ頃合いだと思ったのでこの話をする。

 

この物語の始まりは実に16年前、俺が保育園の年長の頃まで遡る。

年長になった4月、俺は母親に手を引かれ、とある小高い山の中腹にある保育園に連れられて行った。この少し前、俺たちの家族は引っ越しをすることになり、その関係で俺は転園をし、4月から新しい保育園に通うことになっていた。その日はその保育園に初めて訪れる日だった。

「ねえ、ママ。ここどこ?」

「ここはね、これから通うことになる新しい保育園だよ」

「ふーん…」

俺はそのまま母親に手を引かれ、保育園の正門へと繋がるちょっとした坂道を登った。この保育園のそばには桜の木があり、坂道を登る俺らに花びらのシャワーを浴びせていた。あの光景はとても綺麗で、今でもよく覚えている。そして俺らは正門を通り、建物の1番左側の棟に向かった。その棟にある下駄箱に靴を入れ、ガラスの引き戸からその建物の中に入った。入ると、そこはどうやら教室のようで部屋の奥の隅っこに先生が2人、その目の前に多数の児童がいるのが見えた。うまく聞き取れなかったが、先生は何かを喋っている途中であった。

と、次の瞬間、児童の1人が俺らの存在に気付き、それから1秒もしないうちに児童全員が俺らを見た。そしてさらに次の瞬間児童たちは一斉にこちらに向けて走り出し、瞬く間に俺を包囲して質問責めにした。

「お名前は?」

「誕生日はいつ?」

「好きな食べ物は?」

たくさんの人に囲まれ様々な質問をぶつけられ、こんな事初めてでどうすればいいのか、どの質問からまず答えればいいのか、ひたすらに混乱しながらオロオロとしていたところ

パンパン!

先生が手を2回叩いた

児童は一斉に先生の方を見た

「コラ!みんな!困ってるでしょ!楓ちゃんを見なさい!お行儀よくしてるでしょ!」

多数の児童の隙間から俺も先生のいる方向を見ると、たしかに先生の前に1人だけ女の子がちょこんと体育座りをしていた。そして、その子はゆっくりとこちらを見た。その様子はひたすらに可憐で綺麗で美しく、そして可愛かった。この瞬間俺は人生で初めての一目惚れをした。一瞬で心が奪われた。胸が一気に高鳴った。新生活の不安など消し飛んだ。お互いまともに知らないのに俺はその楓という女の子のことが好きになってしまった。

 

これが俺と俺の幼馴染兼好きな人 楓の出会いである